平成26年事業計画変更取消訴訟
最高裁 上告棄却
最高裁判所第1小法廷の安浪亮介裁判長は、2023年3月、上告を退ける決定をしました。
~最高裁の判決について~ 2015年(H27)6月、「第2回事業計画変更決定取消」を求め121名で提訴。 昨年11月4日 、最高裁へ45名で上告。本年3月2日、最高裁は上告を退け
「棄却」の判決でした。 これまで、「区画整理事業の取消」を認めた住民勝訴や、その後に事業計
画変更が行われた裁判事例がなかったため、非常に難しい裁判となりました。 最高裁は「第2回事業計画は3回変更により変更され、審理の対象が存在
しないので、原則として判断を要しない。」という高裁の判決を追認しました。 今回の裁判は、特に地裁の住民勝訴判決は後続する他の「区画整理事業の
取消」を求める裁判の参考となる重要な先駆的判例で、今後の裁判の「礎石」
を築いた有意義なものだったと思います。
尚、3回変更に対しても現在、63人で提訴しています。
平成26年事業計画変更取消訴訟控訴審
判決(東京高裁)
現在、敗訴した羽村市が、令和元(2019)年3月6日東京高裁に控訴したので、私たちは被控訴人として裁判をしていました。2022年8月8日の判決内容は以下の様になります。
主文
1 原判決中、被控訴人らに関する部分を取り消す。
2 被控訴人らの請求をいずれも棄却する。
3 省略(裁判費用の負担について)
解説
高裁判決の内容について
2022年8月9日
被控訴人(住民)代理人ら作成
◆高裁による論点整理【8~10頁】
1)控訴審における審判の対象
羽村市:資金計画、事業施行期間の設定が違法であるとした原審の判断に対して、羽村市が不服を申し立てたのだから、控訴審における審判の対象はその2点に限定される。しかし、これらは第3次変更決定により変更されたから、訴えの利益は失われた。
住民:第3次変更決定は、事業決定、第1次・第2次変更決定を前提とするもので、別個の新たな事業計画が決定されたものではなく、第2次変更決定の取消訴訟に係る訴えの利益は、3次変更決定によっても失われない。控訴審における審判対象は、2次変更決定の適法性であり、その構成要素である資金計画・事業施行期間についても変更前の適否が判断対象となる。
2)事情判決(行政事件訴訟法31条)の法理について
羽村市:原状回復義務を負うなど「公の利益に著しい障害を生ずる」ので、第2次変更決定が違法であるとしても事情判決をすべきである。
住民:必ずしも原状回復は必要ないし、まだ換地処分までされていないので、事後処理は可能である。全体の規模や進捗状況からすれば、ここで事業を取り消すことが公の利益に資するものである。
◆裁判所の判断
1)について【10~23頁】
変更した点を列挙した上で判断(21頁以降)
審判対象は当該処分の違法性一般なので審判の対象が2点に限定されるという羽村市の主張は×→2次変更決定全体が審判の対象
しかし、①資金計画の内容、②事業施行期間の設定については、3次変更決定によって変更され、「その審理の対象が既に存在しない状態になっているのであるから、かつて存在した上記①、②の内容それ自体の適否については、本件訴訟(控訴審)において審判する実益は失われ、原則として判断を要しない(判断の必要もない)というべきである。」(22頁)
(第3次変更後の事業計画全体の適否については別訴で争うべき)
とした上で、①②以外の論点(争点1、争点2)について触れる。
○争点1 原告適格の有無について【23~24頁】
原審の判断を維持
○争点2 都市計画・第2次変更決定の違法性について【25~28頁】
①②以外の点について原審の判断を維持
①②については本来触れる必要がないが、「事案に鑑み、当裁判所の見解を示すこととする」(25頁)=言わなくていいことを言っている部分
→26~27頁の(11)
土地区画整理事業においては資金や期間を正確に予測することは困難→
2次変更決定の適否の判断にあたっても、その決定時点に存在した事情のみに限定されず、事業の執行状況、予算規模、追加の予算措置の獲得、施行期間の延長の可能性等の事情などを総合的に考慮すべき
「ある一定の時点で、事業計画そのものの内容からは一見実現可能性がないようにみえる(に至った)場合であっても、本件のように、事業が相応に進捗し、また、控訴人において、その後の事業計画の進捗を踏まえて事業計画の変更を具体的に予定したような状況にある場合」総合的考慮の結果
「実現可能性を欠くものとして直ちに違法であるとまでは認められない」
【2)については触れるまでもないので検討されていない】
◆裁判所の判断に関するコメント
①変更がされた点については審判の対象が消えてしまう、という判断
=住民の裁判を受ける権利を侵害し、行政の適法性について事後的に判断するという司法の役割を放棄する
②審判の対象がなくなったというなら何も言わなければいいのに、あえて、資金計画と施行期間について「事案に鑑み」言及するという判断
=行政の肩を持ち、高裁として後続の判断に悪しき影響を当たる
③計画が作定された時点の事情のみならず、その後の事業計画の変更予定までも違法性判断の際に考慮できるという判断
=行政側はいつでも「事業計画の変更もありうる」と言っていれば、住民は計画の違法性を問えなくなる、条文の意味がなくなってしまう(資金がなくても著しく長期間であっても計画が通ってしまう)
⇒公共団体と土地区画整理事業では取消判決が出ることがありえない、ということになってしまうだろう
以上
平成26年事業計画変更(第2回事業計画変更)取消訴訟
羽村市が2014年(平成26年)12月17日付で行った福生都市計画事業羽村駅西口土地区画整理事業の事業計画変更決定の取消しを求める裁判
勝訴しました!
2019年2月22日
東京地裁判決
主文1~3のうち2のみ紹介します。
2 被告が平成26年12月17日付けでした福生市都市計画事業羽村駅西口土地区画整理事業の事業計画変更決定を取り消す。
@niftyニュースより記事全文
駅前区画整理「非現実的」=市の事業変更取り消し-東京地裁
2019年02月22日 22時41分 時事通信
東京都羽村市の駅前土地区画整理事業をめぐり、住民らが同市を相手取り、市が行った計画変更の決定取り消しを求めた訴訟の判決が22日、東京地裁であった。古田孝夫裁判長は「市の計画は非現実的」などと述べ、決定を取り消した。
判決によると、同市は2003年、JR羽村駅西口地区の道路拡張などの事業を計画。14年に内容を変更し、道路配置などを見直した。
古田裁判長は判決で、変更後の事業計画が単年度で最大約77億円の支出を予定している一方、市の年間歳入総額は約210億~240億円にとどまるとし、「支出予定額は非現実的と言わざるを得ない」と判断。実際にはほとんど進んでいないのに、21年度中の完了を見込んでいることにも触れ、「事業施行期間も適切に定められているとは認められず、計画変更は違法」と結論付けた。
羽村市の話 直ちに控訴の手続きを進める。 【時事通信社】
羽村市が2014年12月17日付で行った福生都市計画事業羽村駅西口土地区画整理事業の事業計画変更決定の取消し
訴状の概要
東京地方裁判所
原告:施行地区内住民・地権者 山下一夫さんほか120名
被告:羽村市(処分権者 羽村市長)
原告代理人弁護士:佐竹俊之、山口俊樹、山本志都
事業計画変更取消請求事件
請求の趣旨
羽村市が2014年12月17日付で行った福生都市計画事業羽村駅西口土地区画整理事業の事業計画変更決定の取消し
訴状の構成
■事業の概要
施行地区面積 約42.4ヘクタール(羽村市の4%)
事業施行期間 2003年4月16日~2022年3月31日
平均減歩率 21.75%
道路率 14.14%→29.55%
事業費 370億円(羽村市負担256億円)
地区内住民 2002年3月当時3400人、2015年6月現在2639人(推計)
権利者数 2014年2月 地権者数1178人・借地権者25人
移転棟数 968棟
■事業の経過
1978年 羽村駅西口周辺地区3.7ヘクタールの基礎調査
→1988年 町議会で「白紙に戻す」陳情採択
1992年 西口地区対策協議会との「合意」
市長「土地区画整理で整備」と発言
1997年 東京都環境アセス「見解書」公示
2002年 羽村市、事業計画案公告・縦覧
2003年4月
東京都が「事業計画の概要」を認可、市長公告
2008年2月 最初の仮換地指定
2008年3月 第1回事業計画変更公告
2010年12月 換地設計案決定
2013年1月 都市計画変更の公告・縦覧
8月 換地設計決定
12月 第2回事業計画変更公告
■住民の反対の意思表示
地域内住民の過半数の反対署名など
■本件事業の違法性
1)土地区画整理法2条1項違反
住宅地としての基盤すでに整備、緑の破壊、道路のための整 備
2)都市計画法16条違反
住民意思の無視
3)土地区画整理法89条1項違反
照応の原則 換地設計案の通知
4)地方自治法2条14項,財政法4条,土地区画整理法施行規則第10条違反
見通しのない事業(多摩都市モノレールの第3次延伸前提)
実現不可能な財政負担(1年に約60億、税収額100億円)
5)土地区画整理法6条8項違反
6)憲法29条違反
7)憲法13条違反
8)憲法22条違反
以上